あの花で重要なのは最終話ではない

どうも、たかしです。

 

放送からもはや3年が経つが、思うところがあって、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」、通称『あの花』を見た。今回は友人がBD版を貸してくれた。

そして、リアルタイムで見た時は意識しなかったが、今回明確に感じたことがある。

あの花のテーマは「愛と贈与」だ、ということだ。そしてそれは最終話ではなく、最終前話にこそある。話を始めよう。

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(最終前話=第10話より)

 

そもそも論として、この物語は最終話前まで、救われない話だ。何故なら、登場人物は全員、自分のことしか考えていないからだ。

 

ゆきあつは、自分が大好きなめんまが、恋敵じんたんにしか見えず、自分には声も聞こえず、めんまがじんたんに独占されることが我慢ならなかった。だから、めんまを成仏させようとしていた。

あなるは、めんまが成仏すれば、自分が大好きなじんたんがめんまから解放され、自分に振り向いてくれると思っていた。だから、めんまを成仏させようとしていた。

つるこは、めんまが成仏すれば、大好きなゆきあつがめんまから解放され、ゆきあつと仲の良かったあなるも、じんたんがめんまから解放されることで付き合いだせば、最も近しい自分に振り向いて貰えると思っていた。だから、めんまを成仏させようとしていた。

ぽっぽは、目の前で溺死していくめんまをただ見ながら、何も出来なかったことに罪悪感を持ち続け、その為に、かつての秘密基地に縛られ続けた。そして、そのことから解放されたくて、めんまを成仏させようとしていた。

そして最後に、じんたんは大好きなめんまに成仏して欲しくなかった。その理由は、自分だけめんまが見えるまま、死ぬまで一緒に居られればいいと思っていたからだ。

結局のところ、成仏如何に関わらず、誰も、めんまが成仏したいと願うから、そうさせようとした訳ではなかった。実際に女性二人は花火の打ち上げまでの道中で、こう思っている。

 

めんまと私たちの利害は一致している。”

 

彼女らの中では

自分の為に成仏したい人(めんま)⇔自分の為に成仏させたい人(あなる・つるこ)

という関係が成立している。ここにあるのは、自分の欲望と相手の欲望を、対等な関係で【取引】するという行為だ。

 

そして、花火は失敗する。

失意の中、寺で行われた反省会で、それぞれが自分のことしか考えていなかったことが明らかになる。しかし、その中でもう一つ、明らかになることがある。

 

つるこが、昔めんまがじんたんを泣かせる為に秘密で集まろうとしていた日に、あなるとゆきあつがじんたんを呼んでしまったことを、めんまに告げ口していた、と。

その日つるこは、めんまは約束破りの二人に怒るべきだ、と告げた。

だが、それに対してめんまはこう言った。

 

めんまは、じんたんだけじゃなくて、みーんなが大好きだからなぁ…”

 

この言葉に、あなるは目を見開いて驚く。

そして、この時初めて、彼らは自分達の愚かさに気付き始める。

 

めんまはいつも、みんなのことを考えていたのに、自分たちはあの時も、今回も、自分のことしか考えていなかった、と。

 

そして、彼らは、めんま愛されていたことに気づく。

同時に、めんまによって、心に温かさを与えられる。

 

さらにじんたんは、めんまの意思をみんなに打ち明ける。

 

”ほんとはさ、成仏なんて、しなけりゃいいって思ってた。けど、アイツは違ったんだ。俺だけじゃなく、みんなとちゃんと喋りたいって。だから成仏して生まれ変わりたいって。”

 

その時初めて全員が、自分たちの気持ちがどうとかではなく、自分たちを愛し、また、自分達が愛するめんまが成仏したがっているから、それを叶えるのだ!と思えるようになった。だから、めんまの為の超平和バスターズとして、かつてのあだ名で呼び合う仲間として、団結出来た。

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贈与という言葉は、見返りを求めない無償の提供という意味合いを持っている。そして、与えられた人というのは、気持ちが与えた人に寄るものだ。その人のことを考えるようになって、自分もその人の気持ちを考えた上で、与えようとするようになる。

月並みだが、愛とは、自分がどうしたいかではなく、相手がどうしたいかを優先出来ることだと私は思う。彼らは、めんまの贈与によって、自分達の欲望ではなく、めんまの気持ちを優先出来るようになった。

 

その証拠に彼らは、反省会の最後にこう言うのだ。

 

ゆきあつ

めんまの願い、ちゃんと叶えよう。めんまも読んで、日記使って、ちゃんと話してさ。めんと一緒に、もう一度。”

 

あなる

”うん! そうだよ。めんま抜きで話したって意味ない。だって…”

 

つるこ

”私達6人で…超平和バスターズなんだものね。”

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こうして、最終話のかくれんぼへと話は終結していく。

この話で、5人は一度深く挫折し、自分ではなく他人(めんま)を思い遣れるように変わり、結束出来た。救いのない物語が、救いの物語へと変わった転換点だったのだ。

 

色々な人があの花と言えば!と最終話にばかりフォーカスする。しかし、私はあの花のテーマはこの最終前話にこそあると思う。

 

そして、それは恐らく、取引の反対である、愛と贈与なのだ。